量産品であり、一点もの。
RETOUCHとつくった、マーブルコームの物語
同じ型から生まれるのに、一本として同じ柄がない。
株式会社CiiKが展開するメンズヘアコスメ・アパレルブランド「RETOUCH(レタッチ)」のコームは、不要なプラスチックだけでつくられています。
発売から約2年、店舗とECで買い続けられているこのコームは、どのように生まれたのか。CiiKの志波友樹さんにお話を伺いました。
誰でも簡単に、サロンの仕上がりへ
――コームを作ろうと思った最初のきっかけは何でしたか。
RETOUCHではこれまで、スタイリング剤を使って毛流れや束感を生かしたヘアスタイルを多く提案してきました。ただ、サロンでスタイリストがつくるような毛流れや束感を毎日のヘアセットで再現するのは、意外と難しい。そこで、誰でも簡単にその仕上がりに近づけるようなツールを作りたい、というところからコームの企画が始まりました。
ちょうど同じ時期に、私たちがプロデュースするヘアサロン「RETOUCH by fifth」の初店舗をオープンする準備を進めており、店舗で販売できるオリジナルグッズを作りたいという声が社内から上がっていたことも、商品化を後押ししました。
作りたいものの先に、この素材があった
――同じ形なら既存の成形メーカーでも作れたはずです。それでも不要なプラスチックで作ると決めたのは、なぜですか。
実は最初から「再生プラスチックで作ろう」と決めていたわけではありません。デザインを考える中で、単一色ではなく、複数の色が混ざり合ったマーブル模様のコームを作りたいと考えていました。
そこで複数のOEMメーカーさんに相談したのですが、異なる色の樹脂を混ぜて模様をつくる方法は前例が少なく、さらに店舗と自社ECを中心とした販売を想定していたため、生産ロットの面でもなかなか条件が合いませんでした。
そんな中でParallel Plasticsさんを知り、問い合わせたことがきっかけです。実際にマーブル状になったカラーチップのサンプルを見せていただいたときに、自分たちがイメージしていたものとすごく近かった。「再生プラスチックを使うこと」から始まったというより、作りたいものを追求していった先に、この素材と製法があったという感覚に近いです。
数%の違いと向き合った色づくり
――色が決まるまで、サンプルを何度も出し直しました。いちばん粘ったのはどこでしたか。
一番粘ったのは、色の調合です。数%配合を変えるだけでも、明るさや色味、マーブルの見え方がかなり変わります。また、混ぜる素材の種類によって艶感などの仕上がりにも違いが出るので、サンプルを見ながら何度も調整しました。
マーブル柄は存在感が出やすい分、やりすぎると日常の道具としては少し派手に見えてしまう。RETOUCHの商品として、ヘアセットの道具としての機能性がありながら、洗面台や部屋に置いてあっても自然に馴染む。そのバランスにはかなりこだわりました。
店頭で生まれた、「自分の一本を選ぶ」体験
――一本ずつ柄が異なる点について、お客様や売り場からはどのような反応が寄せられていますか。その反応は、想定通りでしたか。
企画段階からマーブル柄にしたいという考えはありましたが、一本ずつ違う表情になること自体を、最初から価値として狙っていたわけではありませんでした。
実際に商品ができて店舗に並べてみると、お客様が複数のコームを見比べながら、自分の好きな柄を選んでくださることがあります。同じカラーでもまったく同じものがないからこそ、「自分の一本を選ぶ」という体験が生まれたのは、僕たちにとっても嬉しい発見でした。
発売から約2年経った現在も店舗・ECともに継続して購入いただいていて、自社SNSメディア「大人男子ラボ」で紹介した際にも大きな反響がありました。当初想定していなかった偶然性が、結果としてこの商品の個性になっていると思います。
揃えることと、生かすこと
――この作り方だからこそ難しかった点、あるいは諦めた点は何ですか。
一般的な均一な素材を使った成形品と比べると、わずかな寸法差など、仕上がりを完全に均一にすることの難しさはありました。一方で、そこを単純にデメリットとして捉えているわけではありません。むしろこの製法だったからこそ、異なる色を混ぜた表情をつくることができ、初回生産から複数のカラーを比較的小さなロットで展開することもできました。
均一につくれないことと、一つひとつ違うものをつくれることは表裏一体だと思っています。その特性を理解した上で、どこまでを品質として揃え、どこからを素材の風合いとして生かすのか。そのバランスを考えることが、この商品ならではの難しさでもあり、面白さでもありました。
欲しいものが先にあり、その背景に素材の物語がある
――以前、使用済み容器を回収して原料に戻す構想をお聞かせいただきました。今、その先に何を見ていらっしゃいますか。
まだ具体的な仕組みとして決まっている段階ではありませんが、RETOUCHの商品づくりの中で生まれる不要なプラスチックを、別の商品へ生まれ変わらせる可能性は引き続き考えています。
たとえば商品の製造過程では、品質基準などの理由から販売できない容器が一定数生まれることがあります。そうしたものを素材として捉え直し、別のプロダクトとしてお客様のもとへ届けられたら面白いと思っています。
今回のコームもそうですが、僕たちは「再生素材だから」という理由だけで商品を作るのではなく、まず欲しいと思えるもの、使いたいと思えるものがあり、その背景として素材のストーリーがあるという順番を大切にしたいです。もしRETOUCHから生まれた素材が、またRETOUCHらしいプロダクトとして戻ってくるのであれば、その背景も含めて一つの商品体験として伝えていきたいと思っています。
違いを、どう魅力に変えるか
――これから同じように不要なプラスチックで何かを作ろうとするブランドに対して、先に経験した者として何を伝えたいですか。
実際に商品を作ってみて感じたのは、一般的なプラスチック製品と同じ感覚で、色や柄、仕上がりを完全にコントロールしようとすると難しい部分があるということです。一方で、その不均一さは、不要なプラスチックを使うからこそ生まれる魅力でもあると思います。RETOUCHのコームも、同じ型で量産しているプロダクトでありながら、混ざり合う素材によって一本ずつ柄が異なる、いわば「量産品であり、一点もの」です。実際に店舗では、お客様がそれぞれ違う柄を見比べながら、自分の好きな一本を選ぶという、当初は想定していなかった体験も生まれました。
こうした素材を使った商品づくりでは、すべてを均一にすることを目指すのではなく、素材や製法から生まれる違いをどう商品の魅力に変えていくかが大切なのかなと思います。今回は、僕たちの「こういうものを作りたい」というイメージに対して、Parallel Plasticsさんが素材の組み合わせや色の調整など、何度も試作を重ねながら伴走してくださったことで形にすることができました。素材の特性を理解しているメーカーさんと一緒に、その可能性を探りながら作っていくことが、再生プラスチックを活用したものづくりでは大切だと思います。
「作りたいもの」が先にある、Parallel Plasticsの共創
志波さんの言葉が教えてくれたのは、不要なプラスチックが選ばれる理由は「再生素材だから」ではない、ということでした。
作りたいものがまずあり、既存の方法ではかたちにならなかった。混ざり合う素材だからこそ、思い描いた表情に届きました。
そして一本ずつ違う柄は、店頭でお客様が見比べる姿を通して、はじめて「選ぶ理由」になりました。
素材の制約のなかには、ブランドがまだ言葉にしていない魅力が眠っています。
それを一緒に見つけ、かたちにしていく。それがParallel Plastics の共創です。
もし、自社のなかに——
- 既存の成形方法では、思い描く表情や質感に届かなかったプロダクトがある
- 小さなロットから、複数のカラーで試してみたい
- 製造の過程で、売り場に届かないプラスチックが生まれている
そんな思いが少しでもあるなら、ぜひ一度、Parallel Plastics に声をかけてください。
Parallel Plastics と、次の共創をはじめませんか。
まだ誰の手にも届いていないプラスチックを、「選ばれる理由」になるプロダクトへ。
まずはオンライン相談で、作りたいものと素材の可能性について、お話ししませんか。
企業の不要プラスチック活用について、詳しくは アップサイクル活用ガイド もご覧ください。